2017年3月11日
オフショア開発の新天地、それは...?
深刻なIT人材不足
日本国内におけるIT人材不足が深刻です。古い記事ですが「IT人材不足が深刻化、2030年には78.9万人不足に」(IT Media)によると、人口減少により2019年からIT人材は今より減少していく一方、需要はますます増えていくのでギャップはどんどん広がっていくそうです。
弊社でもずっと募集していますが即戦力を採用することはほとんど不可能です。そのような人材は東京の大手の会社が紹介手数料を100%(年収と同額)払って採用しているとのことです。われわれのような小さい企業がとても太刀打ちできる状況ではありません。
そんな状況の中で取られる対策は主に2つです。
- 未経験者を採用して育成する
- オフショア開発をする
小さい会社では人材育成も簡単ではありませんが、将来的なことを考えて時間と費用をかけてでも自社の社員として育てるという判断です。うちでも中途採用ですが2月に未経験者を2名採用して、外部研修に行かせ現在はOJTで育成中です。
もう一つの手段はオフショア開発。海外の開発会社に開発業務を委託する方法です。これは人材の確保と同時に人件費の低い国の人材を使うことでコスト削減を図る狙いがあります。日本では大手SIerが10年以上前から中国やインドの企業を中心に委託していましたが、人件費が高くなるに連れてインドネシア、フィリピン、ベトナム、ミャンマーといった東南アジアの国々に広がっています。最近ではベトナムが人気のようです。そんな中で予想外の国の名前が出てきました。パキスタン(正式にはパキスタン・イスラム共和国)です。
オフショア開発拠点としてのパキスタン
先日東京商工会議所からの案内でパキスタン大使館で開催された「パキスタンITビジネスセミナー」というものに出席してきました。事前にパキスタンに関する知識はほとんどない状態でしたが、Wikipediaから拾った最低限の情報です。
パキスタンは元々英領インドの一部でしたが1947年に独立。独立に際して宗教の違いからインドと分離(ヒンドゥー教徒地域がインド、イスラム教徒地域がパキスタン)。その後インドとは何回か戦争をし今も緊張関係が続いている。核保有国でもある。
セミナーの内容は以下のようなものでした。
そもそもパキスタンとは?
面積は79.6万平方km(日本の約2倍)、人口1億8,629万人(2015年現在、世界第6位)。人口がずいぶん多いのが意外でした。出生率も高いそうですが、隣国のアフガニスタンからの移民が増えたのも原因らしいです。
国語はウルドゥー語ですが英語が公用語となっています。日本との関係は深く、1950年代には綿花を日本に輸出して日本の紡績業に大きく貢献したそうです。
なぜパキスタンでオフショア開発?
配布された資料の文言をそのまま転記します。
- 有数IT大卒の優秀な人材
- 平均年齢22歳という若い力
- インドを超えるIT大国
- 人件費が安い
- 公用語が英語である
- 言語習得能力が高い
パキスタンのIT産業の成功例。
- 2010年以来、パキスタンはアジア太平洋ICT連盟アワードにて、eラーニング、遠隔医療、電子政府、セキュリティ、サプライチェーン管理、通信、金融アプリケーションなど多部門で30の金賞、銀賞を受賞。
- クラウドソーシング仲介サービス会社のUpwork社が、フリーランスで働く登録人数と彼らが生み出す収益額に関してパキスタンを全世界トップ5の国に格付け。
- 多くの技術インキュベーター、アクセラレーター、共働ワークスペースがあるため成長するITの勢いを維持、など。
パキスタンでのオフショア開発は可能?
セミナーを聴く限りパキスタンをオフショア開発拠点にすることは魅力的に思えます(それが目的のセミナーなので当然ですが)。ベトナムやミャンマーなどでは続々日本企業が進出して優秀な人材の奪い合いになっていると聞きます。まだ日本企業がそれほど進出していない国で優秀な人材が多くいるとなれば検討する価値はあるでしょう。
ただ、セミナーで聴かされなかったネガティブな情報も気に留めておく必要はあります。内政が不安定でテロや誘拐事件が多いそうです。また、アフガニスタンと接していることからタリバーンやISILが絡む事件もあるようです。先月の2月16日にもISILによるテロが発生しています。
オフショア開発拠点としての可能性は十分に感じますが、まだまだパキスタンについて知らないことが多いのでもっと情報収集する必要があると思います。