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長時間労働の是正と多様な働き方の矛盾

先日夏野剛氏の講演を聴いてきました。題して「日本企業の少し未来の働き方」。1時間15分ほどの講演でしたが、夏野氏の流暢で歯に衣を着せぬしゃべりにあっという間に過ぎてしまいました。

内容としては、他国と比較しての日本の厳しい現状(著しく低い成長率)、翻ってITの進化によって何が変わったか、これからどういうことが起こるうるか、その中で日本を立て直すためにどうすべきか、といったものでした。

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UggBoy♥UggGirl [ PHOTO // WORLD // TRAVEL ]

夏野氏の講演を聴くまでもなく、日本の生産性の低さはずっと言われてきたことです。日本生産性本部が発表する「労働生産性の国際比較」では先進7カ国中で日本は20年近く最下位またはブービーです。

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労働生産性の国際比較 2016年版」より

1位の米国と比べて製造業で69.7%、サービス業にいたっては49.9%と半分以下だそうです。安倍内閣ではこの問題を重要視し、第三の矢(構造改革)の柱と位置づけ「働き方改革実現会議」という私的諮問機関を設けて議論を重ねています。当初そこで議論するテーマとして以下のものが挙げられていました。

  1. 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
  2. 賃金引き上げと労働生産性の向上
  3. 時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正
  4. 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の問題
  5. テレワーク、副業・兼業などの柔軟な働き方
  6. 働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備
  7. 高齢者の就業促進
  8. 病気の治療、子育て・介護と仕事の両立
  9. 外国人材の受け入れの問題―など

たくさんのテーマが列挙されていますが、根本にあるのはできるだけ多くの労働者の待遇を改善することと、より多くの人に労働機会を与えるために多様な働き方を実現することでしょう。それが生産性の向上につながると断言しています。

しかし、最近のニュースを見ていると働き方改革の議論が長時間労働の是正に偏っている感があります。確かに長時間労働はワタミ、電通などの例に見られるように深刻な問題です。シーブレインでもWeb制作部門はこの問題を抱えていて、どうすれば少しでも長時間労働を改善できるか経営者として私の重要な課題だと認識してます。ただ、一律に「長時間労働=絶対的に悪」と言われると違和感も覚えます。この意見には「労働は会社に押し付けられるもの」という考えがあるように感じますが、果たしてそうなのでしょうか。

仕事をやっているとおもしろくて夢中になる時期があります。特に20代、30代で自分のできることが増えていく、つまり仕事を通じて自分が成長していくのが実感できる時期です。こういう充実しているときは毎日遅くまで残業しようが休日出勤しようがまったく厭いません。こんなときに「仕事をやり過ぎだ、とっとと帰れ」と言うのが正しいのでしょうか。本人にとって幸せなことなのでしょうか。自分の成長を邪魔されるように思うのではないでしょうか。

働き方改革として多様な働き方を推進するといいながら長時間労働は絶対ダメというのは矛盾しているように思います。もちろん心身を害するような働き方は決して認められるべきではありませんが、本人が成長する意欲を源泉にして長時間働くことを求めるなら、頭から否定するのではなくどうすれば健康と充実感を両立できるか考える意義はあるのではないでしょうか。

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