2007年2月24日
横浜国大ロースクール公開講座
2/21(水)から3日間、横浜国立大学ロースクールが開催した「企業法務の基礎知識」という公開講座を受講してきた。それぞれ半日かけて3講座ずつ、計9講座だ。
“-企業内コンプライアンスの確立のために-”というサブタイトルが示すように、企業の社外/社内におけるリスクマネジメントや課題を焦点にした内容だった。以下にざっと概要を紹介する。
第1日目
「トラブルを未然に防ぐ契約実務」
昨年初めて実施された新司法試験と最近の裁判官の特徴を口切りに、契約にまつわる具体的な事例から企業が注意すべき点など。
「中小企業経営者のための新しい会社法」
昨年5月に施行された新会社法の特徴について。最低資本金制度の撤廃、株券発行の不要、新しい会社類型「合同会社」制度の創設、特例有限会社、会計参与について、等々。特に、会計参与については気になっていたので参考になった。
「内部者通報制度とリニーエンシー」
「事前抑制から事後的審査へ」(行政の時代から司法の時代)ということで、規制緩和に伴い企業の自由度が増した中、法令遵守より法令を遵守しなかった場合にどうすべきかを意識するという考え方。 独占禁止法における内部告発(リニーエンシー)や、公益通報者保護法における内部告発者の保護という最近の法律の特徴について。
第2日目
「企業買収と税」
昨今の企業再編の活発化で耳にすることが多くなった、企業合併、TOB、MBO、営業譲渡、株式交換、株式移転、会社分割という各ケースと、関連する税制について。
「社会保障制度と企業の責任」
まさしく現在が人口増から人口減への転換期であること、少子化、高齢社会、平均寿命などを具体的な数字やグラフで他の国と比較しながら日本の現状を説明。それだけなら悲観的になってしまうところを、発想を転換(高齢者の定義の変更など)して前向きに取り組むことによって解決策はあるという内容。
「企業活動の国際化と法」
「商業外交(Commercial Diplomacy)」という用語をキーワードに、他国との取引においてトラブルが発生したときに政府を積極的に活用する意義について。
第3日目
「企業の責任と免責」
消費者保護の観点から契約書に「免責約款」があっても無効となるケースがあることを、具体的事例を挙げて説明。認識を改めさせられ、非常に興味深かった。
「小額訴訟とADR」
企業と一般消費者間の紛争(消費者紛争)では被害額が少額で通常の訴訟になりにくいことから、簡単に利用できる「少額訴訟」という訴訟手続きや、「ADR:Alternative Dispute Resolution」(裁判外紛争処理手続)という調停、仲裁、あっせんなどという解決方法があるということ。
「企業犯罪の事例と対処」
元検事の方が企業犯罪の実態とリスクを具体的な事例を挙げて説明。労災隠しという身近な具体例や、雪印、三菱ふそうリコールという話題になった事件を取り上げられ、興味深く聞けた。
各講座とも1時間程度だったのでさわりしか聞くことができなかったが、日々のあらゆる場面に法律が存在し、よほど意識しなければ法を犯すリスクをかかえていることを改めて認識した。経営者自身が法令遵守の意識を持つことは当然のこと、日ごろから社員にも具体的なリスクを挙げて注意を促さなければならない。