2010年3月 8日
コストではなく投資だと思ってほしい
リーマンショック以降、翻訳やWebサイト制作に比べてマニュアルの仕事が減っている。
お客様によく言われる理由は、開発の予算は減らせないからマニュアルの費用を抑えたい、だから社内で制作することにした、というものだ。翻訳やWebサイト制作は自分たちではなかなかできないが、マニュアルなら社内でもできるだろう、ということらしい。
プロに頼むより品質が劣ることはわかっているが、製品そのものではなく付属のマニュアルだからいいだろう、というニュアンスも感じられる。もっとも、そういう判断をするのは経営層であり、お客様に近い現場の人たちは不満を抱いている。しかし、上が決めたことだから仕方ない。
また、外に頼むにしても金額が最優先ということもよくある。実績や提案は評価されても、見積りで他社に決まってしまうケースも多い。それも、驚くほど金額の差がつくことも間々ある。そういったときは、悔しいと言うより唖然とする。
もちろん、価格競争力をつけるための努力はしなければならない。このような情勢の中で以前と同じ価格が通用するとは思っていないので、標準料金は見直すし、もっと安くできるように仕事のやり方も工夫する。しかし、そんな努力を木っ端みじんにするような見積りを提示する会社があると、いったい何なんだと思ってしまう。自分の仕事の価値を自ら貶めているだけではないのか。
そんなこんなで最近の価格第一という風潮にうっぷんが貯まっている中、もっともだ、と思う記事を見つけた。以下に引用する。
最近、いろいろなところを見ていて「学芸会みたいだな」と感じることがあります。それは質の低下から感じます。
どういうことかというと、「コスト削減」を理由に「外注をやめる=自作する」ということがまかりとおっているため、デキのよくないものをたくさん見かける、ということです。これは別段ITに限った話ではなく、どんなものでもそうです。旅行業、運送業、製造業・・。
* セールスのプロでない人がセールスをしているケース。商品の品揃えも、在庫も頭に入ってない、値引き交渉もできない。
* マーケティングのプロでない人が宣伝をしているケース。市場調査もしない、客層の把握もしない。
* なんでも自作したがるITユーザー企業。ベンダーソフトウェアを買うより、余っている人材に作らせるほか無い悲しい現実。こうして「外注できないから余剰人材でなんとかまかなう」を繰り返していると、日本には「専門家」がいなくなってしまうのではないか、と危惧します。
:
(後略)
まったくもってそのとおり!
コストを重視するのは非常に大切だ。しかし、それによって仕事の質も落としていいのか。そこには顧客満足という視点がかけていないか。また、コスト削減の観点からも、作成工程での効率悪化による余計な手間の増加、完成後の品質の低下によるクレーム対応の増加など、トータルで見たときに結局コストが増える結果になっていないのか。
そもそも、それは「コスト」なのだろうか。適正な費用をかけていいものを作り、それがお客様を満足させる。その結果、お客様をつなぎ止め、次の受注(販売)につながっていく。そのように、かけた費用が将来のベネフィットにつながるなら、それは「コスト」ではなく「投資」なのではないのか。
目先の出費だけを注視するのではなく、将来的にどのように影響するのかをぜひ考えてほしいと思うわけである。
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