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イノベーションと枯れた技術

イノベーションと枯れた技術。相反するように聞こえる言葉ですが、ドラッカーは次のように言っています。

「成功したイノベーションのほとんどが平凡である。単に変化を利用したものにすぎない。したがって、イノベーションの体系とは、具体的、処方的な体系である。すなわちそれは、変化に関わる方法論、企業家的な機会を提供してくれる典型的な変化を体系的に調べるための方法論である」
(『イノベーションと企業家精神』)

引用元:3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言

この言葉で真っ先に思い浮かぶのがアップルです。アップル、いやスティーブ・ジョブズに批判的は人は「アップルは何も新しいものは創りだしてはいない。他の人が創ったものを流用しているだけだ。」などと言ったりします。

確かに技術的にはiMacにしてもiPodにしてもiPhoneにしても、アップルが独自に開発した技術は無いのかもしれません。しかし、顧客は興奮して製品に殺到しました。使われている個々の技術は既に世の中にあったものでも、それらを組み合わせて創り上げた製品は革新的(=イノベーティブ)であり新しい体験を生み出したからです。

似たような話に、これはずいぶん前にこのブログでも書いたのですが、任天堂の横井軍平氏が唱えた「枯れた技術の水平思考」という哲学があります。

「ゲーム作りは面白ければよく、ハイテクが必要なわけではない。むしろ高価なハイテクは商品開発の邪魔になる。そのためにごくありふれた技術を使い、それをまるで違う目的に使うことによってヒット商品というものは生まれるのではないか」

引用元:Wikipedia

私はこの「枯れた技術の水平思考」という言葉が大好きです。世の中にないものを作ってやろうと意気込んでる若者にぜひ意識してもらいたい考え方です。顧客が求めているのは革新的な技術ではなくて、製品やサービスが提供する今まで経験したことがない体験だということです。

うちの社員も何か新しい製品やサービスを顧客に提供しようというときに絶対忘れないでほしいです。技術は顧客の満足を実現する手段であって目的ではない。あくまでも顧客視点で、何ができれば喜ばれるのかを常に念頭に置くことことが大切だということ。

念のために付け加えると、これは技術を軽視しているのでは決してありません。技術がなければ実現する手段が限られる、いわゆる引き出しが少ないということですから競争力に劣ります。常に新しい技術を習得する努力を怠ってはいけません。ただ、目的をまちがえるなということです。


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