2016年12月16日
人間に差別なし、地上に境界なし
12月に入って早々に会社の忘年会を行いました。場所はモンゴル料理店です。やはり羊肉の料理が多かったですが、牛肉もあり炒飯もありどれも美味しかったです。店内は本国から呼んで作ってもらったという本格的なゲルの様式になっていて雰囲気は満点です。またモンゴル衣装も用意されており、好きなものを選ぶと着付けもやってくれます。男子社員は着せてもらって記念写真も撮りました。
モンゴルと聞いて真っ先に思い浮かべるのはやはりチンギス・ハンでしょう。店内にも肖像画が飾ってありました。チンギス・ハンの偉業は誰もが知っていると思いますが、改めて彼とその後継者たちが率いたモンゴル帝国の領地を地図で見てみると驚くばかりです。東は朝鮮、中国から西は東ヨーロッパまでユーラシア大陸を横断するとてつもなく広大な範囲を支配しています。歴史上でこれほどの広大な地域を治めた国はありません。なぜそのようなことができたのでしょう。
Wikipediaの「モンゴル帝国」の記事より引用
チンギス・ハンについて検索すると堺屋太一氏の「世界を創った男」という書籍に行き着きます。チンギス・ハンの生涯を記した長編小説です。堺屋太一氏はチンギス・ハンについて以下のように述べていられます。
まず、チンギス・ハンはなぜ、世界征服を考えたのか。
世界征服を考えた国は歴史上いくつかあります。たとえば、アレキサンダー大王もそうですし、ローマ帝国もそうでした。東洋の漢帝国や唐帝国もそうです。あるいは、イスラム教を広めたサラセン帝国とか、十六世紀のスペインやポルトガル、十九世紀のイギリスやフランス、そして20世紀の社会主義国際運動などもそれに入るでしょう。いろいろそういう国はあります。
こうした世界征服を考えた国の共通の目的は二つなのです。
一つは経済的目的です。交易を広げ、資源を奪い、市場を広げて国の富を増やし、国民を豊かにしようという経済的目的です。
二つ目は、自分たちの文化や宗教を世界に広げようという文化的、信仰的目的です。たいていはこの二つが重なり合っています。
ところがチンギス・ハンには、この二つが二つとも全く見当たりません。
では、チンギス・ハンは何のために世界征服をしたのか。それは、他の征服者とは全く逆なのです。 「人間(ジンカン)に差別なし、地上に境界なし」こそ彼の理想でした。どんな人種、どんな宗教、どんな言語、どんな体形の人間も、全く差別しないで実力主義で採用し、出世させる。どこまでが本国で、どこからが植民地だという境界を地上につくらない、完全に境界のない世の中をつくろう。無差別無境界な世界をつくろう。そのことによって、人も物も金も情報も完全に自由に動き回るグローバルな世の中をつくろう、としたのです。だから私は、この人に「世界を創った男」という尊称をつけたのです。 グローバルな世界をつくるという思想は、チンギス・ハンが初めてでしょう。
意外でした。これまでの私のモンゴル帝国に対するイメージは戦上手で好戦的。抵抗する町はためらうことなく女子供まで一人残らず殺戮する。そんな残虐な印象しかありませんでした。それが祖であるチンギス・ハンの中ではこのような理想があったとは。しかし、確かにチンギス・ハンは富や名声を求めていなかったのかもしれません。恐怖による支配の一方で取り立てる税はわずか1割。そして墓も残していません。自分の力を誇示するために強引に税を取り立て豪華な城を築いたり、死後まで名声を残そうと自分を神格化する他の支配者とは一線を画しています。
あれほど広大な地域を征服したモンゴル帝国もやがて権力争いによって不安定になり、たたみかけるように疫病と天災に襲われ急速に国力を失い分裂していったそうです。英雄は一代限り。国を引き継ぐことはできてもチンギス・ハンの理想を引き継ぐことはできなかったのでしょう。