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『宇宙からの帰還』

先日、電車で遠くに出かけることになったので、道すがら本でも読もうと駅上の本屋に入った。

特にあてもなく見て回っていたら、平積みの中に『宇宙からの帰還』(立花隆)を見つけた。1983年に出版され話題になった本だ。

特別興味を覚えたわけではなかったが、電車の時間はあるし他にそそられる本もなかったのでそれに決めた。

これが、予想以上におもしろかった。科学的・技術的な観点からの本だろうと思っていたのだが、むしろ哲学的・宗教的な内容だ。そして、それを語るのが最先端のテクノロジーを体現する宇宙飛行士だというところに、リアリティを感じた。

宇宙空間や月面という、かって人間が経験したことのない状況に置かれて、宇宙飛行士が何を感じたか。内面的に何が起こったのか。

宇宙を舞台にしたテレビ、映画などは数々あり、外から見た地球、果てしなく続く宇宙空間というのは見慣れた光景のように思っていた。しかし、現実にそれを体験した人々が語る言葉から、今まで漠然と想像していた宇宙とは全く別の、本当の暗闇、完全な静寂、孤独、生命のもろさ等々、非常にリアルに宇宙を感じることができた。

何人かの宇宙飛行士のインタビューから、特に印象的だったものをいくつか引用する。

ジム・アーウィン(アポロ15号)

地球の美しさは、そこに、そこだけに生命があることからくるのだろう。自分がここに生きている。はるかかなたに地球がポツンと生きている。他にはどこにも生命がない。自分の生命と地球の生命が細い一本の糸でつながれていて、それはいつ切れてしまうかしれない。どちらも弱い弱い存在だ。かくも無力で弱い存在が宇宙で生きているということ。これこそ神の恩寵だということが何の説明もなしに実感できるのだ。


ジーン・サーナン(ジェミニ9号、アポロ10、17号)

宇宙から地球を見るとき、そのあまりの美しさにうたれる。こんな美しいものが、偶然の産物として生まれるはずがない。ある日ある時、偶然ぶつかった素粒子と素粒子が結合して、偶然こういうものができたなどということは、絶対に信じられない。地球はそれほど美しい。何らの目的なしに、何らの意志なしに、偶然のみによってこれほど美しいものが形成されるということはありえない。そんなことは論理的にあり得ないということが、宇宙から地球を見たときに確信になる。
写真で地球を見ても地球しか見えないのに、現実には地球を見るとき同時に地球の向こう側が見えるのだ。地球の向こう側は何もない暗黒だ。真の暗黒だ。その黒さ。その黒さの持つ深みが、それを見たことがない人には、絶対に想像することができない。あの暗黒の深みは、地上の何ものをもってしても再現することはできないだろう。あの暗黒を見たときにはじめて、人間は空間の無限の広がりと時間の無限のつらなりを共に実感できる。永遠というものを実感できる。永遠の闇の中で太陽が輝き、その太陽の光を受けて青と白にいろどられた地球が輝いている美しさ。これは写真では表現できない。


まだ他にも印象的な話がたくさんあるのだが、興味のある方はぜひ一読を。

念のために、私は決して宗教的な意識が強いわけではなく、ましてや特定の宗教に傾注しているわけではない。逆に、だからこそこの本がおもしろかったと言える。

この本を読んだ後に月から見た地球の写真を見ると、今まではちがう感慨を覚える。


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