2010年8月16日
「もしドラ」を読んで
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」を買って読んでみた。今やベストセラーとなっている本なので、どんなものなのか気になったのだ。
なるほど、売れてるだけのことはあって、単純ながらものめりこみやすいストーリーの中に、ドラッカーの話をうまく絡めている。ドラッカーに興味を持つ取っ掛かりとしてはいい。
あくまでも取っ掛かりであって、これだけで終わったらドラッカーも何もあったもんじゃないが。
私もこれを読んでから、自宅の書棚にあるドラッカーの本をいくつか引っ張り出して、パラパラと読み直してみた。その中に、最初に読んだときに特におもしろいと思った本がある。「創造する経営者 」だ。
これは、ドラッカーの著作の中でも実践に結びつく具体的なことが書いてあり、経営者としての自分にとって直接的に参考になることが多かったのだ。
改めて読み直していたら、序章の終わりにこんな一節を見つけた。
伝承を知識にまとめ、思考を体系にまとめることは、人間の能力を卑しめてマニュアルに置き換えることと誤解されがちである。もちろん、そのような試みは、ばかげている。愚者を賢者に、無能を天才に変えられるような本はない。
しかし、体系的な知識は、今日の医者に対し、100年以上前の最も有能な医師以上の能力を与え、今日の優れた医師に、昨日の医学の天才が想像もできなかった能力を与える。いかなる体系も、人間の腕そのものを伸ばすことはできない。しかし、体系は、先人の力を借りて常人を助ける。常人に対し、成果を上げる能力を与える。有能な人間に卓越性を与える。
これは、この本の意義をドラッカーが説明している部分なのだが、これはそのままマニュアル(ここでのマニュアルとは業務マニュアルのこと)の存在意義の説明に当てはまる。
マニュアルの目的は、渾然としたナレッジを整然と体系化し、第三者に伝達し共有することにある。先人が相当な時間をかけて習得した知識やノウハウを、短時間で効率的に伝達することによって、新たなナレッジを生み出す機会を拡大することが、マニュアルの存在意義である。
ドラッカーに限らず、本は読み返すたびに新しい発見がある。もう一度「創造する経営者」を読み直してみよう。
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら | |
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